プロジェクトマネジメントの考え方
1. ProjectControllerが支援するプロジェクトマネジメントプロセス
1.1 はじめに
1.2 プロジェクトマネジメントの目的
1.3 プロジェクトの特徴
1.4 プロジェクトのタイプ
1.4.1 内部プロジェクト
1.4.2 外部プロジェクト
1.5 プロジェクトマネジメントプロセス
1.5.1 開始フェーズ
1.5.2 計画フェーズ
1.5.3 実行フェーズ
1.5.4 終結フェーズ
1.1 はじめに
プロジェクトマネジメントとは期限、コスト、品質、性能を計画どおりにプロジェクトを完成させるためにプロジェクトのすべての局面を計画し、モニタリングしコントロールすることです。
プロジェクトを効率的に管理するために、プロジェクトマネジャーはプロジェクトの構造とプロジェクトのライフタイムのそれぞれの段階特有のマネジメントの必要条件を理解する必要があります。
このドキュメントの目標は舞台を設定することです。 すなわちProjectControllerモジュールのバックにある強調すべき考え方を説明することです。
1.2 プロジェクトマネジメントの目的
プロジェクトマネジメントはしばしば相反する2つのプロセスを含みます :
1. 多くの人々の仕事への取り組みを調整すること、適切なリソースが適切な時に利用可能であるように確保することです。
2. プロジェクトに利益が確保できていてコントロールできている間に、すべてのアクティビティが予算と時間について計画通りに実行されることを確実にすることです。
1.3 プロジェクトの特徴
プロジェクトには多くのさまざまな形態、大きさ、複雑さのレベルがあります。
通常プロジェクトは会社の日常の仕事からは分離されます。
プロジェクトは本質的に以下によって特徴づけられます。
・ ユニークさ。
・ 具体的なゴールと明確に定義された目標。
・ 決められた時間枠とアクティビティの順序。
・ リソースが限定されていること。
・ 何人かの人々の関与 - しばしばそれは伝統的な組織を横断したものです。
プロジェクトのもうひとつの特徴は、前もって指定されたゴールに導くための構造とプロセスのユニークな組合せです。
・ プロジェクトのゴールはサブゴールと論理的に結びつけられたアクティビティの構造に分解されます。
・ プロセスはそのゴールに向かうために、アクティビティとリソースの調整とモニタリングに関係しています。
1.4 プロジェクトのタイプ
本質的に、違ったスコープと、計画に際しての違った要求を持つ2つのタイプのプロジェクトがあります。
1.4.1 内部プロジェクト
オフィスを移転させるとか、組織についての戦略展開を始めるような特別なアクティビティがしばしば内部プロジェクトとして計画・実行されます。
これらの主なコストは労働コスト(従業員が消費した時間)と関係があります。
一般的に、内部開発と結びついたコストは全体的なプロジェクトコストとして企業のバランスシートでは見ることができません。
適切な方法で管理されない内部プロジェクトは、会社運営からかなりの人的リソースを消耗させている可能性があります。
例として、1時間のミーティングでのすべての内部の参加者の給与を算出してみましょう。
これに、次のような間接費も加えます : 社会保険、オフィスや仕事スペースのコストなどです。
内部プロジェクトは長期的な投資と見られるべきです。
このポイントは、アウトプットが財務上の項目で測ることが難しいという事実によって強調されます。
◆ ProjectControllerはそれぞれの従業員の単位時間の労働コストを記録できます。 それによってプロジェクトに対して全体的な投資の正確な見通しを与えることができます。
この機能は、TaskTimerの作業負荷表示と相まって、内部プロジェクトに優先順位を付ける優れた機会を与えます。
1.4.2 外部プロジェクト
外部プロジェクトは顧客あるいはマーケット主導のプロジェクトだと考えられます。
それらの目標は投資に対する収入を確保することです。
マーケット主導のプロジェクトには、製品開発、マーケティングキャンペーン、あるいは販売のような活動を含みます。
これらのプロジェクトについては、短期、中期、長期のベースで投資利回り(ROI)を計算します。
そのため、例えば内部労働コストや、外部のコンサルタントや直接費のような実際の投資の明確な青写真を必要とします。
顧客主導のプロジェクトでは、特定の顧客のニーズを満たすために、発生したコストを記録して、クライアント宛にサービスや供給した商品についての送り状を作ります。
◆ ProjectControllerは、プロジェクトに関連づけられたすべての実際のコストを記録・追跡します。
◆ ProjectControllerは、顧客主導のプロジェクトのために、コストを記録して、そして顧客にそれらの送り状を作ることを可能にします。
◆ ProjectControllerから、予算と実際に消費された時間の乖離を通知することができます。
顧客主導のプロジェクトは顧客からのオファーにより始められ、そしてこのオファーが受け入れられるとプロジェクトが開始します。
オファー途中のプロジェクトは、従ってそのプロジェクトへの収入が約束されない投資だと見なされます。
1.5 プロジェクトマネジメントプロセス - プロジェクトライフサイクル
プロジェクトマネジメントプロセスは4つの段階とひとつのコントロールプロセスに分けることができます。
1.5.1 開始フェーズ
開始フェーズの目的は、概念的な考えを具体化して、プロジェクトの必要性を説明し、そのコスト・リスク・制約・必要なリソースなどを明確化し利益予測することで、最終的にプロジェクトを開始するために組織の承認を得ることです。
TaskTimer + ProjectControllerは、プロジェクトの開始フェーズの作業をより簡単に実践できるように支援します。
◆ プロジェクトで必要となるコストの概算見積
ProjectControllerは、以前の同様のプロジェクトの会計報告、スタッフと労働コストの記録にアクセスすることができます。
その情報は開始フェーズでは全体的なプロジェクトコストの概算見積のために使うことができます。
◆ プロジェクトのリソース計画策定
特定のタスクはプロジェクトの参加者に特定のスキルとそのレベルを必要とします。
組織で利用可能なリソースのスキルとレベルを評価することは、プロジェクトの実現可能性を早期に判断するためには不可欠な作業です。
ProjectControllerは、組織の中のさまざまな部署の個人のスキルやそのレベルおよび彼らの作業負荷を見ることができるので、リソースの利用可能性について評価することができます。
このため、プロジェクトチームを設立するために必要な、リソースの全体像を把握することができます。
◆ 定義付けたプロジェクトの具体化のためのシミュレーション
組織の承認を得るためには、プロジェクトのイメージや全体像をより具体的に示すことが重要です。
ProjectControllerの「プロジェクト開始ウィザード」を使うことによって、プロジェクトのゴールの設定、マイルストーンの設定、アクティビティのスケジューリング、プロジェクトチームの割り当て、そして(計画時に利用できるように)テンプレートとして登録しておくことができます。
1.5.2 計画フェーズ
計画フェーズはプロジェクトの実際のスタートです。
この時点で、プロジェクトの責任者とプロジェクトチームが任命され、そして計画が具体的にデザインされます。
プロジェクトのスコープが記述され、そしてメインのプロジェクトがより小さい、いっそう処理しやすいアクティビティのコンポーネントに分解されます。
実行すべき特定のアクティビティが識別されて順序立てて並べられます。
そして、個々のアクティビティの所要時間が見積られ、そしてプロジェクト工程表を作るために必要なリソースが分析されます。
プロセスを監視するために、マイルストーンと報告の手順が組立てられます。
また、プロジェクトを成功に導くためにリスクとなる項目を洗い出し、「発生する確率と、予測されるプロジェクトヘの影響」について分析し把握しておくことが重要です。
最終的に、プロジェクトのアクティビティを完了するために必要なリソースとコストの見積が計算されます。
◆ プロジェクトの全体的な金額・時間の見積
ProjectControllerは、組織の内外を問わず、プロジェクトに関係しているあらゆる人の時間単価と、職務の結果として発生する報酬も登録できます。
消費時間についての予算と実績の情報を連結することによって、ProjectControllerはプロジェクトの全体的な金額と時間についての予算と実績をボトムアップによる計算により提供します。
◆ プロジェクトの完成の可能性見積の精度向上 : 3点見積(PERT機能)
ProjectControllerは、もう1つの重要な見積機能であるPERT機能(プログラムの評価とレビューテクニック)を提供します。
PERT - 所要時間
プロジェクトに期待される所要時間の悲観的 / 現実的 / 楽観的な3点見積を与えることができるPERTを使って、プロジェクトの完成についての統計的な予想を与えることができます。
この情報はプロジェクトの全体としての見積のために使われ、プロジェクトが予算内で完了する可能性の悲観的 / 現実的 / 楽観的な予想を把握できます。
計画フェーズで、プロジェクトの予算を評価することに対して、PERTによる見積は非常に有効な機能です。
プロジェクトの完成に対する低い確率は、予算がオーバーランしプロジェクトの実際の仕事量が計画した時点より高くなる危険性を表示します。 この場合、代わりの計画を考慮することが必要であるかもしれません。
PERT - 所要日数
PERT機能はまたプロジェクト期限についての評価を可能にします。
同じように使用時間について立てた予算を、タスク従ってプロジェクトが期限通りに完了する可能性を評価することができます。
この機能は、プロジェクトの「クリティカルパス」を視覚化することで、計画段階でクリティカルなタスクを識別することができます。
「PERT-所要日数」機能の大きな利点はプロジェクトの計画フェーズでプロジェクトの予想されるコースが現実的であるかどうか判断することができるということです。
プロジェクトの個別の要素を分析することができ、そしてPERT分析でプロジェクトのボトルネックが明らかになったら、早い段階で特定のタスクに関して実行の代替案の可能性を検討することができます。
◆ タスク依存性の設定
また、プロジェクトを計画するとき、どのタスク同士が相互依存的であるかを登録して、可視化することができます。
他のタスクが始まったか、あるいは終わったときに、そのタスクが始めるか終わることができると言うように、2つのタスクの依存関係を連結することができます。
このようにして、プロジェクトコントロールビューは、クリティカルパスが十分少なく「クリティカル」になるように計画を調整・変更することをより容易にするために、プロジェクトアクティビティの流れの概要を与えます。
◆ プロジェクトのリスク管理 - 重要成功要因の管理
リスクに対処する方法はいろいろありますが、多くのリスクマネジメントの手法は以下の4つのステップが基本です。
① 存在する脅威を明らかにする
プロジェクトの全期間にわたり発生しうるすべての不確実性を明らかにします。 ここでは考えられる脅威をいくつでも洗い出すことが重要です。
② 脅威の大きさを定量化する
すべての脅威に関して、その影響の範囲と、発生の確率について情報を入手する、ここでは、脅威の性質とプロジェクトヘの影響を明らかにすることが目的です。
③ 最大の脅威を見極める
どの脅威が、最もプロジェクトの目標達成の妨げとなるのかを判断します。
それには脅威の発生する確率と、予測されるプロジェクトヘの影響の両者を掛け合わせて検討するのが一般的です。
④ 脅威に対処する
重大脅威への対処方法を決める。複数の選択肢を比較検討して、選択したプランを行動計画として具体的化します。
重要成功要因の管理
ProjectControllerの重要成功要因機能は、直接特定のプロジェクトにリンクされないけれども重要な役割を演ずる要因の概要を把握することができます。
あらゆるマイナスの影響を最小にするためにモニターするべきです。
重要成功要因機能は[CSF]タブで設定・表示することができます。
同じプロジェクトにいくつものCSFを入力することができ、ペイン上にカラーマークで表示されます。
プロジェクトの実行とともに、それらの要因にフォーカスを集中して、プロジェクトの実行状況を正しい方向に修正することができます。
アクティビティが完了したり状況が進捗すると、CSFの状況も変化するので、[編集]ボタンをクリックして、それぞれの要因の「可能性」と「影響度」を調整します。
このプロセスを通すことで、念頭においておくべき、そしてコントロール下にあることが確認できるようにしなければならない脅威のことを忘れずに把握しておくことができます。
◆ プロジェクトの委任計画
ProjectControllerの重要な機能は委任機能です。
プロジェクトの計画フェーズでは、誰に何時、どのタスクを委任するかという計画を策定することが、プロジェクトをスムーズに立ち上げ、実行することに対して非常に重要です。
ProjectControllerでは、委任される仕事の受信者に対してコストや時間に関して調整することができ、プロジェクト計画におけるすべてのタスクを記録・追跡できます。
① 特定のタスクに必要となるスキルと、メンバーのスキル設定
特定のタスクはプロジェクトの参加者に特定のスキルとそのレベルを必要とします。
組織で利用可能な人々のスキルとレベルを評価するためにProjectControllerを使うことができます。
ProjectControllerのスキル機能はプロジェクトリーダーに同僚 / 従業員の能力レベルとともに特別なスキルを登録することを可能にします。
プロジェクトの計画フェーズではプロジェクトの個々のタスクを実行するのに必要なスキルを設定することが重要です。
利用可能なスキルと必要とされるスキルについての情報の結合は資格を持ったグループを設定するときやタスクを割り当てるときに非常に有効です。
② プロジェクトタスクの委任計画
ProjectControllerのプロジェクトの計画ビューは、プロジェクトのタスク一覧とプロジェクトグループのメンバーと彼らの作業負荷の概要を表示します。
ここから自動的に利用可能な限定された人々にある特定のタスクを委任することができます。
自動的な委任は、スコープが限定され明確に定義されたタスクについて使用すると理想的です。
この機能はプロジェクトリーダーが委任とその計画において、多くの時間を節約することが可能になります。
1.5.3 実行フェーズ
これは実行段階です。 - アクティビティが実行されそして進捗についてモニターする必要があります。
1つのタスクの遅れが次のタスク、そして最終的にプロジェクト全体に重大な影響を及ぼすことがあります。
そのために、プロジェクトマネジャーがすばやくその乖離の原因を識別することが可能で、それらの原因に対して即時に行動を起こすために日々の進捗を把握できる状態にあることはこのフェーズでは特に重要です。
◆ 日々の進捗をモニターする
ProjectControllerはプロジェクトの進捗状況をモニターして、結果として起こる変更を識別して、リアルタイムに計画を更新することができる理想的なツールです。
① マイルストーン、プロジェクトの自動的な進捗フォロー
プロジェクトやマイルストーンの[オートメーション]タブの設定により、プロジェクトやマイルストーンの進捗の自動的な管理ができます。
② 進捗状況の概要を把握する
ProjectControllerは、その状況把握の目的にふさわしいさまざまなビューから、プロジェクトの進捗を把握することができます。
③ PERT機能では、プロジェクトが進行するにつれて、予算内で完成するかどうかの可能性をチェックし続けることができて、進捗状況が良くなっているか、悪くなっているかどうか見ることができます。
これにより、プロジェクトの残りの期間でのクリティカルパスを識別して、クリティカルタスクに集中することができます。
◆ 消費された時間だけでなくコストについても把握する
ProjectControllerのアカウント機能によって、日々のコストと消費時間を記録することが簡単にできます。
アカウント機能はプロジェクトマネジャーに判断の前提となるプロジェクトの財務状況を与えます。
また、タスクが完了すると、直接総計を計算して送り状を作ることを可能にします。
1.5.4 終結フェーズ
◆ ProjectControllerを使うと、プロジェクトのすべてのレコードを記録・追跡できます。
プロジェクトが完了したら、それを保管する前に、評価レポートを作成することができます。
プロジェクトがクローズした後、常にそのプロジェクトを呼び出すことができ、すべての適切なデータにアクセスすることができます。
このようにすることで、次のプロジェクトの計画を立て管理するときに、この経験から大きな利益を得ることができます。